矯正専門歯科医院で行われている消毒、殺菌、滅菌の仕方はどうなっているのでしょうか?
その前に洗浄、消毒、殺菌、滅菌が別のものだということを説明致します。
洗浄とは、
物体や環境表面から、目にみえる汚れ(有機物および無機物など)を除去することです。使用した器具をスタッフさんが最初に行ってくれています。
消毒とは、
病原性微生物を死滅、または除去させて感染の危険をなくすことを言います。簡単にいうと細菌を弱体化させることです。
殺菌とは、
菌の生活力を奪うことをいうが、広い意味で使われ、芽胞、カビなど多くの種類の微生物を不活化することをいいます。病原性のある微生物を完全に殺菌することです。
滅菌とは、
病原体・非病原体を問わずすべての微生物を死滅、または除去することを言います。
消毒<殺菌<滅菌の順で、より菌がいない状態に近づくと考えるとわかりやすいと思います。
では当院ではどのような方法で器具を清潔に保っているのでしょうか?
【基本の歯科用器具の場合】
① 洗浄(器具についている目に見える汚れを取ります)
② 消毒液に浸して、超音波洗浄をします
③ もう一度別で消毒薬に着けます(塩化ベンザルコニウム)
④ オートクレーブ(高圧蒸気滅菌):完全に微生物を死滅させます
【プライヤーやプラスティック系器具の場合】
① 洗浄(器具についている目に見える汚れを取ります)
② 消毒液に浸して、超音波洗浄をします
③ もう一度別で消毒薬に着けます(塩化ベンザルコニウム)
④ ガス滅菌で完全に微生物を死滅させます。
※プライヤーはワイヤーを切ったりするものが含まれるので、錆による劣化を防ぐためにガス滅菌にしています。プラスティック系のものも熱による劣化が心配されるので、熱を用いない滅菌にしています。
ガス滅菌器(エチレンオキサイド滅菌器)
【患者さんが使用していた装置を医院でお預かりする場合:裏側ワイヤーの装置、バンド類】
① 洗浄(器具についている目に見える汚れを取ります)
② 消毒液に浸して、超音波洗浄をします
③ もう一度別で消毒薬に着けます⇒塩化ベンザルコニウム
④ オートクレーブ(高圧蒸気滅菌):完全に微生物を死滅させます。
⑤ 滅菌パックに入れて、模型箱へ(再度使用する場合に備えます)
【殺菌だけでなく滅菌までする理由】
殺菌である程度の菌は死滅しますが、滅菌ではないと死滅しないもの芽胞いうものがあります。
これは、細菌が厳しい環境の中でも生存するために、冬眠状態になるもので、頑丈な殻でおおわれており、殺菌では死滅しません。
そのために滅菌で完全に増殖できない状態にします。病原菌の中には芽胞を作るものがいくつかあります。
破傷風菌:破傷風の原因菌です。
ボツリヌス菌:食品中でボツリヌス毒素を生み出し、食中毒の原因になります。